東京高等裁判所 昭和30年(う)1880号 判決
被告人 今村高五郎 外一名
〔抄 録〕
次に、選挙運動のために使用する文書の頒布は、公職選挙法第一四二条に規定する所によるべきであつて、該規定によらない文書の頒布は、これを一切禁止する趣旨であることは同法第一四六条の規定のある所からしても容易に観取することができる。被告人等の頒布した文書が、所論の二二日に個人演説会を開催することができなかつたことを清水市民に陳謝する旨を記載した、いわゆる陳謝ビラにすぎなかつたとしても、それが選挙運動のために使用した文書たることが、その記載内容自体から明らかである以上、かような文書を新聞紙に折り込んで選挙区内に頒布するがごときは、まさしく、右選挙法の禁止を犯すものであつて、陳謝ビラたるにすぎないが故に法の禁止に触れないというような主張は、ただただ独自の見解というの外はない。だから、原判決がその判示事実に対し、判示法条を適用して被告人等を処断したのは、まことに相当であるというべきであつて、原判決には所論のごとき擬律錯誤の違法はないものといわなくてはならない。論旨第二点は、もとより理由がない。